二十四節気、1年間限定のスタイル提案blog
<陰陽の中分となれば也>
暑い日は減り代わりに冷気を感ずる日が増える。
昼と夜の長さがほぼ同じになることで、この日は秋彼岸の中日でもある。
秋の七草が咲き揃う頃である。
たとえば、これから来客があるとき
そっと花を飾って迎えたい
客人がそこに居る数時間
その間だけのため
客人は気がつかないかもしれない
でも、その空気は感じ取ってお帰りになるでしょう
ダリア
ハゼ
皿
片口
素材はこの4つだけ
最小の要素だけで作る宇宙
仁田山禎士 -Nitayama Tadashi-
はなうさぎ
札幌市豊平区平岸4条7丁目10-16
TEL・FAX 011-813-3430
OPEN 10:00~19:00
日曜定休
橋本忍 -Hashimoto Shinobu-
TENSTONE
札幌市中央区南3条西8丁目島屋ビル2F
TEL・FAX 011-261-6921
OPEN 11:00~21:00
DATA: フラワーアレンジ 仁田山禎士 / 写真・文・器 橋本忍
秋にまつわる言葉は多い。例えば、運動の秋、食欲の秋、芸術の秋、そして読書の秋。
秋の夜長は、普段なかなか手をつけられない「大物」を引っ張り出して読んでみるのもいいかもしれない。
と、言うわけで引っ張り出してきた大物は日本文学全集。しばらく前から読みかけで放置していた代物だ。
読書をすると眠くなる、という方のために今回のお供は番茶にしてみる。急須から漂う香ばしい香りに包まれながら熱い番茶をズズズとすする音と、文豪の言葉をカサカサとめくる音がなんとも心地よい。時空を越えた壮大な文学旅行の始まりだ。
番茶と文学と言えば、幸田露伴の「番茶会談」を思い浮かべる人もいるかもしれない。幸田露伴は尾崎紅葉、坪内逍遥、森鴎外と並んで「紅露逍鴎時代」と呼ばれる明治文学の一時代を築いた文豪である。
「番茶会談」は、明治44年に少年向けのビジネス雑誌「実業少年」に連載された作品だ。少年向けのビジネス雑誌があったというのも凄いが、この「番茶会談」の内容も凄い。少年たちが勉強会の場で、番茶を片手に未来や夢について語りあうのだが、そこに登場する町内の物知りな老人が当時にしてはとんでもない先見性で少年たちに教えを説く。
例えば、電力の無線輸送についてや捕盗装置(今で言う監視カメラ)、圧搾空気を利用した空気力車などの事業や技術についてなど。空気力車こそいまだ実現していないが、電力の無線輸送はインターネットとなって実現され、監視カメラはもはや防犯装置の常識になっているのだから、幸田露伴の先見性には恐れ入る。
果たして、こうして「時雨」というブログが無線輸送によって世界中の人々に届けられていることも露伴には見えていたのだろうか。
話を元に戻そう。文学全集のページが進むにつれて番茶も注ぎ足しされていく。急須で淹れた番茶の面白いところは、1杯目、2杯目と味が変わるところだ。本来ならば、茶の濃度が変わらないように幾つかのカップに均等に注いでいくものだが、ひとり酒ならぬ、ひとり茶ではそうもいかない。1杯目と2杯目で濃度が違い、徐々に、より深い味わいになっていくのもひとり茶の楽しみ方のひとつと捉えることが、流儀や作法にとらわれない時雨流なのだ。
時雨流で淹れたお茶でひとり読書に没頭するもよし、番茶会談のように気の合う仲間と番茶片手に語り合うもよし。
お茶と共に過ごす豊かな時間は、心身共に、実りの秋となることだろう。
(了)
DATA: 写真・文 山田憲治
札幌でもっとも美しい建物のひとつが日本銀行札幌支店。
札幌市中央区北1条西6丁目。オフィスビル街にあって地上2階地下1階建ての、まるで金庫のようなその箱は広大な敷地を擁するにもかかわらず通行する人や車窓からの視界に入る事は少ない。
実際誰かに、僕がとても気に入っているこの箱の事を話すと「そんなのあった?」という答えが返ってくる事がほとんど。
そんなところも僕がこの箱を気に入っているところのひとつである。
昭和36年に建てられたこの箱は当時どのように考えられデザインされたのだろう?
金庫という「用」にだけ徹したものだったのか、それとも建築家の遊び心的作為=より金庫らしくしてしまえ、というようなデザインだったのか。
どちらにしても、他にはあり得ないほどみごとに金庫を表現している日本銀行札幌支店。
この箱がひっそりと街のど真ん中に在り続ける事を願います。
・1989年 第4回札幌市都市景観賞受賞
DATA: 写真・文 橋本忍
日々の暮らしのカレンダー。でも、それに従うだけじゃつまらない。
自分だけの、自分のための、ちょっと特別なカレンダーを。
これからの1年、美しく粛々とした季の暮らしに触れて過ごしてみたいと思います。
秋分のくらしごと
~お彼岸おはぎと夏じまい~
水始涸~ミズハジメテカルル
川の水がやせ涸れはじめる頃、田んぼの水を抜く「落とし水」の時期が秋分
山里では、そんな黄朽葉色の美しく・・少しだけ寂しい景色が広がっているのでしょうか。
秋分はお彼岸の節気
そんな景色に思いを馳せて、今年はおはぎを作りましょ
豆
小さな小豆をひとつづつ、
傷んだものはより分けて
嫌いじゃないな、この作業
炊き
「豆炊きは一日しごと」
豆を炊くには流儀があって、従わなければうまく炊けない
おろそかにすると味にでる
シンプルだけに難しい
小手先じゃ出来ない仕事
美味しいあんこが食べたければね
「うち水」 ほっこり炊く為に
「渋切り」 とがりを消すために
踊らせず
ころあいを読み灰汁を取る
そして、待つこと。
春はぼたもち、秋のはおはぎ。
どちらも同じものだけど
秋のそれは、あんこの色が萩の花色とにているからそう呼ぶらしい。
手間をかけることの楽しさ、手間をかけた一日の満ち足りたきもち。
こんな事が今日の一番だいじなことになっても、たまにはいい。
秋分は夏じまい
お盆が過ぎても、天を仰いでしまうような暑さが続いた札幌ですが
いよいよもって、しっかりと夏の始末をする時期がきたみたい
夏の梅仕事で使ったザルも
もう一度丹念に洗って天日干し
湿度が急に低くなるこの時期は、こうした仕事の「しごろ」です。
また来年イソイソと心躍る夏に会いましょう。
秋分は・・
たぐりよせる祖母の言葉と向き合う仕事が多いのです
だから「お彼岸」、なのでしょうか。
DATA: 文・写真 井川美香
時雨shigure 次回更新は【寒露・10月8日】の予定です
暑い日は減り代わりに冷気を感ずる日が増える。
昼と夜の長さがほぼ同じになることで、この日は秋彼岸の中日でもある。
秋の七草が咲き揃う頃である。
Hashimoto Shinobu × Nitayama Tadashi
そっと花を飾って迎えたい
客人がそこに居る数時間
その間だけのため
客人は気がつかないかもしれない
でも、その空気は感じ取ってお帰りになるでしょう
ダリア
ハゼ
皿
片口
素材はこの4つだけ
最小の要素だけで作る宇宙
仁田山禎士 -Nitayama Tadashi-
はなうさぎ
札幌市豊平区平岸4条7丁目10-16
TEL・FAX 011-813-3430
OPEN 10:00~19:00
日曜定休
橋本忍 -Hashimoto Shinobu-
TENSTONE
札幌市中央区南3条西8丁目島屋ビル2F
TEL・FAX 011-261-6921
OPEN 11:00~21:00
DATA: フラワーアレンジ 仁田山禎士 / 写真・文・器 橋本忍
普段着の茶
秋にまつわる言葉は多い。例えば、運動の秋、食欲の秋、芸術の秋、そして読書の秋。
秋の夜長は、普段なかなか手をつけられない「大物」を引っ張り出して読んでみるのもいいかもしれない。
と、言うわけで引っ張り出してきた大物は日本文学全集。しばらく前から読みかけで放置していた代物だ。
読書をすると眠くなる、という方のために今回のお供は番茶にしてみる。急須から漂う香ばしい香りに包まれながら熱い番茶をズズズとすする音と、文豪の言葉をカサカサとめくる音がなんとも心地よい。時空を越えた壮大な文学旅行の始まりだ。
番茶と文学と言えば、幸田露伴の「番茶会談」を思い浮かべる人もいるかもしれない。幸田露伴は尾崎紅葉、坪内逍遥、森鴎外と並んで「紅露逍鴎時代」と呼ばれる明治文学の一時代を築いた文豪である。
「番茶会談」は、明治44年に少年向けのビジネス雑誌「実業少年」に連載された作品だ。少年向けのビジネス雑誌があったというのも凄いが、この「番茶会談」の内容も凄い。少年たちが勉強会の場で、番茶を片手に未来や夢について語りあうのだが、そこに登場する町内の物知りな老人が当時にしてはとんでもない先見性で少年たちに教えを説く。
例えば、電力の無線輸送についてや捕盗装置(今で言う監視カメラ)、圧搾空気を利用した空気力車などの事業や技術についてなど。空気力車こそいまだ実現していないが、電力の無線輸送はインターネットとなって実現され、監視カメラはもはや防犯装置の常識になっているのだから、幸田露伴の先見性には恐れ入る。
果たして、こうして「時雨」というブログが無線輸送によって世界中の人々に届けられていることも露伴には見えていたのだろうか。
話を元に戻そう。文学全集のページが進むにつれて番茶も注ぎ足しされていく。急須で淹れた番茶の面白いところは、1杯目、2杯目と味が変わるところだ。本来ならば、茶の濃度が変わらないように幾つかのカップに均等に注いでいくものだが、ひとり酒ならぬ、ひとり茶ではそうもいかない。1杯目と2杯目で濃度が違い、徐々に、より深い味わいになっていくのもひとり茶の楽しみ方のひとつと捉えることが、流儀や作法にとらわれない時雨流なのだ。
時雨流で淹れたお茶でひとり読書に没頭するもよし、番茶会談のように気の合う仲間と番茶片手に語り合うもよし。
お茶と共に過ごす豊かな時間は、心身共に、実りの秋となることだろう。
(了)
DATA: 写真・文 山田憲治
日本銀行札幌支店
札幌でもっとも美しい建物のひとつが日本銀行札幌支店。
札幌市中央区北1条西6丁目。オフィスビル街にあって地上2階地下1階建ての、まるで金庫のようなその箱は広大な敷地を擁するにもかかわらず通行する人や車窓からの視界に入る事は少ない。
実際誰かに、僕がとても気に入っているこの箱の事を話すと「そんなのあった?」という答えが返ってくる事がほとんど。
そんなところも僕がこの箱を気に入っているところのひとつである。
昭和36年に建てられたこの箱は当時どのように考えられデザインされたのだろう?
金庫という「用」にだけ徹したものだったのか、それとも建築家の遊び心的作為=より金庫らしくしてしまえ、というようなデザインだったのか。
どちらにしても、他にはあり得ないほどみごとに金庫を表現している日本銀行札幌支店。
この箱がひっそりと街のど真ん中に在り続ける事を願います。
・1989年 第4回札幌市都市景観賞受賞
DATA: 写真・文 橋本忍
時雨フォト募集
時雨では読者の撮った「時雨フォト」を募集しています。
テーマは、あなたなりに感じる「時雨」を表現した写真であればOKです。
時雨チームの選考によりサイトに掲載させて頂きます。
投稿はこちらより
時雨では読者の撮った「時雨フォト」を募集しています。
テーマは、あなたなりに感じる「時雨」を表現した写真であればOKです。
時雨チームの選考によりサイトに掲載させて頂きます。
投稿はこちらより
季のこと綴り
自分だけの、自分のための、ちょっと特別なカレンダーを。
これからの1年、美しく粛々とした季の暮らしに触れて過ごしてみたいと思います。
秋分のくらしごと
~お彼岸おはぎと夏じまい~
水始涸~ミズハジメテカルル
川の水がやせ涸れはじめる頃、田んぼの水を抜く「落とし水」の時期が秋分
山里では、そんな黄朽葉色の美しく・・少しだけ寂しい景色が広がっているのでしょうか。
秋分はお彼岸の節気
そんな景色に思いを馳せて、今年はおはぎを作りましょ
豆
小さな小豆をひとつづつ、
傷んだものはより分けて
嫌いじゃないな、この作業
炊き
「豆炊きは一日しごと」
豆を炊くには流儀があって、従わなければうまく炊けない
おろそかにすると味にでる
シンプルだけに難しい
小手先じゃ出来ない仕事
美味しいあんこが食べたければね
「うち水」 ほっこり炊く為に
「渋切り」 とがりを消すために
踊らせず
ころあいを読み灰汁を取る
そして、待つこと。
どちらも同じものだけど
秋のそれは、あんこの色が萩の花色とにているからそう呼ぶらしい。
手間をかけることの楽しさ、手間をかけた一日の満ち足りたきもち。
こんな事が今日の一番だいじなことになっても、たまにはいい。
秋分は夏じまい
お盆が過ぎても、天を仰いでしまうような暑さが続いた札幌ですが
いよいよもって、しっかりと夏の始末をする時期がきたみたい
夏の梅仕事で使ったザルも
もう一度丹念に洗って天日干し
湿度が急に低くなるこの時期は、こうした仕事の「しごろ」です。
また来年イソイソと心躍る夏に会いましょう。
秋分は・・
たぐりよせる祖母の言葉と向き合う仕事が多いのです
だから「お彼岸」、なのでしょうか。
DATA: 文・写真 井川美香
時雨shigure 次回更新は【寒露・10月8日】の予定です
about 時雨 Shigure
和と上手に暮らすライフスタイル提案マガジン
二十四節気(にじゅうしせっき)の各時節柄にフォーカスを当て札幌を中心に活動する各方面のプロが
Moditional = [traditional + modern]
をキーワードに、各視点から「和と現代の暮らしをクロスオーバー」させ、心と暮らしを豊かにするスタイルを提案していこうというプロジェクトです。
違う分野で活動する面々が、どんな Moditional を展開しコラボレートしていくのか私たち自身もとても楽しみにしています。
和と上手に暮らすライフスタイル提案マガジン
二十四節気(にじゅうしせっき)の各時節柄にフォーカスを当て札幌を中心に活動する各方面のプロが
Moditional = [traditional + modern]
をキーワードに、各視点から「和と現代の暮らしをクロスオーバー」させ、心と暮らしを豊かにするスタイルを提案していこうというプロジェクトです。
違う分野で活動する面々が、どんな Moditional を展開しコラボレートしていくのか私たち自身もとても楽しみにしています。
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by shigure_project
| 2008-09-23 00:00
| 【秋分】